8月最後の薄物での外出は最後、は多分、です。
一昨日、薄物訪問着でちょっとだけ遠出してきました。
場所は内緒、どなたかの持ち物かも内緒の、
古民家と敷地内のお茶室
ここで「お茶事をしますからどうぞお越しを」とお声がけいただき
6月からずっと楽しみにしていました。
電車を乗り継いで黄金色に色づいた稲穂を見ながら茅葺の古民家へ。
案内の方にご挨拶して寄付きで身支度を整え、冷たいお茶を一服いただいた後
露地の待合へ。
亭主の迎え付けを受け、蹲を使ったのち、お席入り。
床には「夏雲奇峰多(かうんきほうおおし)」のお軸
風炉釜・飾りつけの拝見を済ませて席に着くとご亭主が入室、ご挨拶の後、炭点前がありました。
夏らしいキリリとしたお炭を拝見し香合の拝見を一座が終えると一旦茶室から退席、
本来ならば茶室で頂く懐石ですが
ゆっくり召し上がってください、という御亭主の心遣いで別室へご案内いただきました。
最初の汁椀はあわせ味噌に小茄子、飯器汁替えの2種目の汁椀はズッキーニ
向付は無農薬のお豆腐に塩を乗せたもの。
煮物碗はすっぽんのお出汁に大根、すっぽんの身とえんぺら(このお出汁がこの上なく美味しかった)
焼き物はローストビーフにお庭の畑でとれたおくら。
画像にはないですが箸洗いの小吸い物碗は、なんと、炭酸水にパッションフルーツの果汁と実。
豚の角煮とゆで卵の炊きあわせ・きゅうりとトウモロコシの酢の物
盃の千鳥の流れで八寸、 小吸い物の蓋に鱧の落としと地元の山でとれた珍しいキノコ
納盃のご挨拶に続いて湯斗と香のもの
もうすっかりお腹いっぱいになって、再び路地へ。
案内の銅鑼の音で席入り
点前座の左は嵌め殺しの窓になっていて庭の仏さまが見える仕掛けです。
大きな茅葺の母屋と、庭に作られた四畳半台目のお茶室。
様子がわかりやすいように室内の物は画像をかなり明るく加工しています。
土風炉には見事な鱗灰、お釜はこの茅葺の古民家をうつした田舎家釜(お席主さんがこの茶室を作られた時に釜師にオーダーされたものです。
炭点前後の席入りなので床のお軸は外され、朝鮮白磁の大壺に碗蓮(わんばす)が入っていて夏のお席らしい演出に思わずため息が出ます。
「もう入らへんわ~」と口々に言いながらたっぷりと大きな主菓子をいただきました。
お豆腐1丁もあるほどの葛のお菓子。
口当たりがとても良くて皆、ぺろりと頂き「美味しいなぁ」と笑い声
ご亭主がお席に入られ、濃茶を練っていただきました。
茶碗にお茶が入り、湯を注ぎ練り始められるとそれはそれはお茶のいい香り
上等な濃茶だということが香りだけでわかりました。
まったりと馥郁とした濃茶は格別。
満腹のお腹が落ち着くような気がします。
この一服を頂くための懐石の品々とご酒(私は下戸なので形だけ)
続いて、部屋をうつして広々と明るい茶室にお薄席
涼やかな色合いの皆具が設えてありました。
お干菓子
持ち出されてきた瞬間は本物の鮎の塩焼きかと思っていて
ご亭主が「今朝、皆様のために釣ってきました」とおっしゃったので
(えぇ、どうやって頂けばいいの⁉)と戸惑っていましたら
鮎をかたどった干菓子でした。
「以前に頂いたことがあって、この度の茶事には是非に、と思って準備させてもらいました、京都からの取り寄せですけどね」と京都からお尋ねした私たち一同に笑いながらネタ晴らししてくださいました。
でも、どう見ても本物の鮎の塩焼き(^。^)
内緒でお店のご案内
竹串を抜いて二つに割ると鮎のお腹にはほんのりとした甘みの漉し餡。
サクサクとした落雁製の姿とのバランスも良く美味しく頂戴しました。
お薄をいただき、寄付きで帰り支度をしていると程よく冷えた梨と冷たいお茶が運ばれてきてゆっくりと帰り支度をする気持ちの余裕をいただきました。
帰りの電車の中でご一緒した皆さまと久しぶりに楽しかった5時間ほどを反芻するようにお道具や設え、おもてなしのすばらしさを話し合いました。
道中、列車の乗り換えもあり、在来線に乗る時間も長いので
暑いのを承知でフルレングスの塵除けを着て行きましたが
塵除けの中は
白地の絽に裾は紫のぼかし染の付下げ訪問着
銀駒刺繍で夏の花が刺繍されています。
帯は七宝繋ぎの柄で絽綴れの九寸名古屋
本当は当初、袋帯を、と考えていたのですが少しでも楽に、と名古屋にしました。
帯締めは白に金糸で笹波組。
久しぶりにローカル電車(1時間に1本・汗)に乗っての小旅行気分の味わえた一日でした。