5月に摘んだお茶の葉は蒸して乾かし、
荒茶となったものを茎や傷んだ葉などを取り除いて
碾茶と呼ばれる状態にして茶壷に詰め、約半年の間 熟成されます。
そして、11月
開炉の時期に新茶として客人を招きご披露する、
ざっくりいうと口切の茶事とはそういうものです。
門や路地の待合、路地箒などすべて清らかな青竹の設えで整えられた中を
茶室に入ると床には茶壷が飾られています。
席入りし、亭主との挨拶を済ませ茶壷の拝見を所望すると
お茶の詰められた壺と入り日記(その壺の中に納められているお茶の名前が書かれたもの、普通、3・4種類のお茶が半袋に入れられ壺に納めてあります)が拝見に出されます。
お正客がその入り日記の中からお茶の一つを選びますと
亭主はそのお茶の入った半袋(和紙で出来た袋、中に入っている濃茶用の茶葉の名前が書いてあります)を壺の中から取り出し
こぼれ出た詰茶を壺に戻し、和紙(今回の口切では美濃和紙が用いられました)でまた壺に封をして水屋に下がります。
ご参考までに。
ご流儀によって作法は様々です。
その間、水屋では会席の準備を進め、同時に所望され亭主が持って戻ったお茶を
石臼で挽き始めます。
まずは客が選んだお茶(濃茶になります)をゴロゴロと挽き、その後、
詰茶(これは薄茶でいただきます)も同じように石臼で挽きます。
口切は他のお茶事以上に水屋は忙しく段取りよく進めないとお茶が間に合わないということになってしまいます。
今回のお稽古ではメンバーを二つに分け
一方が亭主側、もう一方がお客側で進めていきました。
石臼は廻すのに結構力がいります。
むやみに速く回すと摩擦熱でお茶の風味が変わってしまうので
一定の速度でお茶を引いていきます。
すりつぶされたお茶の葉が抹茶になって臼の下から少しずつ出てくると
何とも言えない芳醇な香りがします。
年に一度、石臼で挽いたばかりのお茶をいただくのですが
普段お稽古で使っていただく濃茶より少し粒子が大きく
練っていてもだまになりにくいのです。
豊かな香りと舌に感じるほのかな甘みがいつまでも口の中に残って
特別なお茶、というのをしみじみ感じます。
詰め茶を引いた薄茶は濃茶よりもさらに粒子が大きく
いただくと少しざらっとしているのがわかります。
本来、新茶を運ぶためのクッション材として詰められていた茶葉なので
半袋に入れられた最上級の茶葉と比べると元々が大きく少し硬いので
石臼で挽いても少しざらっとした引き茶になるんですね、
こればかりは飲んでみないことにはその感じがわかりづらいかなと思います。
みんなで交代して石臼を挽いたのですが
結構全身の力が必要で大変な作業です。
お客が会席をいただき、炭を改める時間の内に人数分のお茶を挽かなくてはなりません。
今日の着物
縫いの一つ紋が入った色無地
帯は元は羽織だったものを名古屋帯に仕立て直してもらったもので
総絞り、雲取りに紅葉
帯揚げは灰白の縮緬に唐草の地紋で小さな牡丹が刺繍されたもの。
帯揚げは濃い緑から白に色移りさせてある平組です。
《豆知識》
帯締めは左右で柄や色が違っている時は主になる方が左に来るように結びます。
この帯締めはさし色の白がメインなので白が左に出るように結びました。
日本では帝が北辰に座して南面されることから左が上位とされているのですが
最近は雛飾りのお内裏様とお雛様の並べ方も関東と関西では違っていますね。
京都は御所の東が左京、西が右京、というように
何事もいまだに左が上位として扱います。
長時間の口切の茶事
緊張のうちに半日が過ぎました。