母方の祖母は真夏以外はいつも和服で過ごし、
真夏は浴衣地を簡単に縫った、あの頃「アッパッパ」と呼ばれていたワンピース型の洋服を着ていました。
10代で茶道のお稽古に通うことになった時、
お茶会や初釜で着物を着る必要がある時は
その祖母が着せてくれていました。
私は人形のようにただ突っ立っているだけ。
着物や長襦袢、羽織や道行など、
それぞれ畳み方が違うことを、実際に畳みながら教えてくれたのも祖母でした。
母は、着物はたくさん持っていましたが、
普段の生活の中で着物を着ることは無く、
私の入学・卒業や、親族の祝い事への参列など、特別な行事の時にしか着物を着ない人だったので、和服関係の諸々は私は祖母から教わりました。
大学生になって、
「いつまでも人を頼らず自分で出来るように
着付けを習いに行きなさい」
と言われて初めて着付けを習いに行った先はご近所の土井のおばさんがやっている教室でした。
祖母は自分が教えたのではいつまでたっても私が本気で覚えることをしない、と思ったのだと思います。
それまでずっと、土井のおばさん、と呼んでいた人を、急に『先生』と呼ぶ照れ臭さを感じながら通った教室では、着付けの小物は、
多分当時としては画期的?な便利グッズ、
コー○ン製品を使っていました。
そこの製品を使って着物を着る方法を教える、というのが売りの教室だったんでしょうね。
ゴムで出来た腰紐や伊達締めを使って
苦しくない着付け。
最初に自分で着るための着付けをそこで習った私はその後もずっと便利グッズを使って着物を着ていました。
プロの着付け師さんにお願いする時、
着付け用の小物類は、コー○ンの便利グッズと一緒に、念のため、と祖母の和箪笥の中の、
モスリンの腰紐や博多織の伊達締めも持って行くと、着付け師さんは必ず昔ながらの小物を使って着物を着させてくれました。
着付け師さんに着付けてもらうと
1日着物を着て動き回っていても、さすがプロ、
着崩れすることはほとんどなく、
いつも自分で着てると無意識に何度となく襟元に手が行き、長襦袢や着物の襟合わせを直したくなるのに、そんなことも無いのです。
40代になって、
それまで何となく自分でやっていた着付けに、
ふと、(これで良いのかな?なんとなくスッキリ着ることができていない)と気になり始め、
着付け教室に通うことにしました。
市○ひろみさんの主催する着付け教室では
昔ながらの小物を使っての着付けを習いました。
⬆︎博多織の伊達締め
慣れるまでは、それまで使っていたゴムのシャーリングの入ったポリエステルの伊達締めの方が使い勝手が良く、洗濯、お手入れも簡単なので⬇︎こちらの方が出番が多かったのですが
博多織の伊達締めに慣れると、
シュッと締まり、襟元が着崩れることも無いことに気がつきました。
同じように、腰紐もゴム製のバンドの方が楽で使いやすいと思っていたのですが
ある時、着付け師さんから
「ゴムのベルトは便利だけれど着物の生地が痛む」
という話を聞いてからは
昔ながらのキンチやモスリンの腰紐を使うようになりました。
立ったり座ったりの動作が多い茶道の場面での着物にはゴムのベルトよりも裾が落ちてきたり
着崩れが少ない気がします。
腰紐はキンチが一番しっかり締まり、着物の生地にも優しいと思いますが、使った後のお手入れは少し気を使います。
その点、モスリンの腰紐はガンガン洗濯機で洗えていつでも清潔、アイロンをピシッとかけていると気持ちよく使えます。
と、今日は私が使っている伊達締めと腰紐のことを書いてみましたけれど、あくまでこれは個人的な感想で、
着付けにはこれがベスト!と言っているわけではありません。
何度か着ているうちに、その人その人で便利なやり方、使いやすい道具が見つかってくるのだと思います。
いずれにしても、少しでも着物を着るという行為が『面倒』でも『大変』でも無い、となればいいな、と思っています。