先週の半ば2日連続での夏日で、まるで空きがどこかに行ってしまったようでしたけれど、
昨日あたりから朝晩はまた少し気温が下がってきました。
実家の母が入院している事情からいつ何時、病院から連絡があるかもしれず
格別必要な用以外は出かけず、常にスマホを手元に置いて過ごしていましたけれど
今日はお茶のお稽古日だったので出かけてきました。
お稽古の場でもこの数日で急増しているコロナ感染者の話題が出て
これからのお茶のあり方、行く末についても皆様と色々と話をしました。
濃い灰青色の総絞りの小紋
帯は塩瀬、銀糸刺繍で観世水、そこへ菊の花がやはり刺繍で入っています。
この帯を締めることができるのもぎりぎり11月まで、と自分では思っています。
菊は年中用いてよい、とされているようですけれども
様々な模様の中に菊も描かれている、という場合はそれでもいいでしょうが
この帯のように菊のみ(観世水が刺繍されてはいますけれど)のような場合は
やはり秋限定の帯、という風に考えた方が良いように思います。
帯揚げは八掛の色に合わせて濃紫のちりめん、
帯締めは前帯の柄を殺さないように淡灰色の冠組にしました。
絞りのアップ画像を載せてみます。
本来の色が出ませんでした。実際は上の着姿の色の着物です。
絞りは気の遠くなるような作業の繰り返しで成り立つ技法ですけれども
着物の格、という点から考えると小紋の扱いになるようです。
見事な絞りの振袖などがありますけれど、振袖は別として
絞りで柄を作り絵羽に仕立ててあれば訪問着としての扱いになりますけれど
このように一色、または絞りの中の点部分を別の色に染めてある大変手間のかかるものですらも、格で言うと小紋です。
現在、このひたすら根気のいる絞りという技法をやる職人さんはほとんどいらっしゃらないそうで、いつだったか、呉服屋さんに立ち寄った時に
「絞りの反物が入ってます、もう手に入らないかもしれないからどうですか?」
と声を掛けられたほど、絞りの職人さんが減ってしまっているそうです。
絞り
今日私が着たこの着物は『鹿の子絞り』というものです。
絞りの模様が鹿の子供の背模様のようだから鹿の子という名称がついています。
同じ模様を『疋田』ということもあります。
ただし、疋田というのは実際に反物を絞ったものだけでなく
絞り風の柄行、つまり擦りの柄の場合にも疋田と言います。
擦り疋田、というふうに。
疋田は、この鹿の子絞りだけでなくこのような着物の文様全体をさした言葉です。
私のもう一枚の絞りの着物
hibinokurasikata.hatenablog.com
こちらも総絞りですけれど枯れ木と鳥のような模様も絞りで作られているので
見るからに小紋、とわかります。
こちらの着物は上の濃灰青の総鹿の子絞りとは違って
疋田鹿の子絞りの中に柄の部分には一目絞りや帽子絞りなどの絞り方が使われています。
絞りの着物はもう「古臭い」という印象を持たれるかもしれませんね。
でも寒い時期には、空気をたっぷり含んで体を包んでくれる絞りの着物は重宝します。
着物に関わる仕事を家業とされているおうちや職人さんが
目に見えて減っていくのは本当に残念です。
時代の流れには逆らえないのでしょうね……