昨日の真野響子さん親子の着物姿、
お二人の着物の掛け衿の長さの違いに目が行きました。
娘さんの柴本幸さんの掛け衿は帯近く、
一方、お母さんの真野響子さんの掛け衿は胸のあたりまでですね。
着物は洋服と違って今の形になってから
型そのものには長年変化がなく、仕立てる際、
一反の反物から切り分ける順序も場所も決まっています。
けれど、流行がないか、と言えばそんなことはなく、
各部の長さは時代によって少しずつその時の流行が反映されています。
私が着物を作ってもらうようになった頃(昭和40年末頃)は
今に比べると裄の仕立てはもっと短く、手首がにょっきりと出るような寸法でした。
163㎝の私の今の裄の寸法は1尺8寸 約68㎝です。
娘時代に仕立ててもらった着物の裄は1尺6寸~1尺6寸5分 約60~62㎝でした。
短いですよね。
昭和50年代頃まで着物は普段着、動きやすい、働きやすいように
裄が短めだった、と聞いたことがあります。
それと同じように、紬や小紋など、普段着の着物は袖丈も短めでした。
今は袖丈は1尺3寸 約49㎝が一般的で
訪問着や付け下げなど、身長の高い方やこだわりのある方は袖を長めに仕立てられますけれど、何も言わず仕立てに出すと1尺3寸に上がってきます。
以前は、訪問着・付下げ、小紋、紬とそれぞれの袖丈に合わせて長襦袢を作っていましたけれど、数が増えてくるとどの長襦袢が訪問着用、と、とっさに判断がつかなくなり
いつしか私もすべての着物を袖丈1尺3寸で揃えてしまいました。
羽織の着丈も、時代によって随分と長さが変わりました。
今は長羽織が流行っているようです。
(私は長羽織が苦手です、タクシーに乗るときなど後ろ身頃の捌きの所作をキレイにできなくて着なくなりました)
記録として撮ってある着画のうち、いくつかの掛け衿をコラージュしてみました。
襟の抜き方によって少し違ってきますが、↑これらはほぼ帯にかかるギリギリくらい。
↑こちらは古い着物ばかりなのでどれも掛け衿が短いです。
(母譲りの物など、50年以上前の着物たちです)
下左の付下げ訪問着は一度洗い張り仕立て直しに出したのですが
その際に「掛け衿を伸ばして」とお願いするのを忘れて元の寸法で仕立てあがってきました。
掛け衿が短い古い着物でも、仕立て直しする時に
掛け衿の下の衿部分の生地を出して摘み襟仕立てにしてもらうとか、
掛け衿と衿の下の生地を入れ替えて足し布をしてもらうなど、
いくつか方法があって掛け衿を長く仕立てることが出来ます。
次の画像は最新刊の「美しいキモノ」から拾ってみたもの。
右の画像二つはかろうじて掛け衿の端が見えていますが
左側の三枚はどれも掛け衿の端は帯の中に入ってしまっています。
↑七緒のムック本
大久保信子先生です。
大久保先生の掛け衿も端が帯の中に入っています。
最近は掛け衿の端が帯に入ってしまうか
ぎりぎり帯の上あたりに少し見えるくらいの寸法が流行りの仕立て方のようです。
昨日、『徹子の部屋』で真野響子さんがお召しになっていた着物は
お若い頃に仕立てられたのか、背の高い方のようなので
掛け衿がかなり上、胸のあたりまでになってしまっているのか不明ですけれど
個人的には
「昔、若い頃に作った着物が今の年齢になってしっくり着られるようになった」
と言うようなことなら、なんとなく好ましいなぁ。と思ってしまいました。